日本型雇用への妬み嫉み — Diary over Finite Fields

日本独特の雇用制度というとおそらく多くの人が

  • 終身雇用
  • 年功序列型賃金

と言うと思う。ただ、個人的にはもうひとつ挙げたい。それがメンバーシップ型雇用だ。

先に結論を書くと、僕はメンバーシップ型雇用が嫌いだ。なぜ嫌いなのかと言うことをあとで書き並べるが、理屈なんて無くてただの感情の問題、音楽性違いでしかない。感情にもっともらしく文章をつけると理屈っぽくなるだけだ。あるいはこれはベンチャー企業にしか属したことがない自分のポジショントークだし、新卒一括採用の権利を行使しなかった妬み嫉みだ。

というわけでいろいろと書くけど、あまり真に受けないようにして欲しい。

メンバーシップ型雇用

メンバーシップ型雇用は、検索エンジンで調べればいくらでも謎のメディアが解説していると思うが、この記事でも簡単に説明しよう。すごいざっくり言うと「採用する人を決めて、あとで仕事を割り振る」という採用方法だ。一般に求職者は会社に入るまで自分がどんな内容の業務につくのか、どんな職種になるのかが内定が出た時点では決まっていない。

いわゆる日系企業の新卒一括採用はこの方式だ。内定を受諾した後に希望していた部署に配属されなかった、みたいな話はメンバーシップ型雇用だから起こるし、それ自体は問題視されない。会社と求職者の間の契約に、業務内容や配属先は含まれず、場合によっては会社の命令で住む場所まで指定されたりする。

対義語はジョブ型雇用だ。すなわち「空きがあるポジションに対して求人を出す」。会社が必要としている職種に合う人を探して採用する。専門職だとイメージがつきやすいだろう。例えば美容師を採用したい、と会社が考えた時には美容師の資格を持っていることが要件になるだろうし、美容師がする仕事はお客様の髪を切ったり、シャンプーやヘッドスパなどのサービスを提供したりといった内容のはずだ。こうした要件や業務内容ををまとめて明文化したのが「ジョブディスクリプション」であり、求職者はそれを読んで応募する。採用が決まった後で、ジョブディスクリプションと全く違う内容の業務に従事させたり、そこに書かれていない仕事をさせるのは問題になる。

補足

メンバーシップ型雇用は、終身雇用を前提にしている。つまり、会社がその雇用を保証する代わりに、どんな労働力として使われるかも含めて会社に委ねるという仕組みだ。転勤させられるかもしれないし、やりたくない職種をずっとやらされるかもしれない。ただ年功序列なので居続けると賃金は上がっていく。

嫌う理由

冒頭に述べたように、僕はメンバーシップ型雇用を嫌っている。理由をいくつか述べる。冒頭にも書いたけどこれはポジショントークであり、妬み嫉みである。

ちなみに「生産性を落とす」とか「デキる人に仕事が集中する」みたいな話は書かない。それもあると思うけど、実例を見たことはないので、あくまで外側から観測した僕の感想を書く。

終身雇用が前提の仕組みであること

自分の父親が実は転職を数回している。祖父は(父方も母方も)漁師だから雇われの身ではない。だからそもそも終身雇用なんて自分とは関係のない文化圏の話、おとぎ話だと思ってる。終身雇用で死ぬまで生きたモデルケースをただの1人も知らない。社会の教科書に終身雇用について書かれてたな、くらいで実感がまるでない。

だから新卒採用で会社になぜそこまで何もかも指示されなければならないのか、全く理解できない。頭では終身雇用というのは非常に大きな利であって、その代わりに様々な制限がなされるという理屈は理解できる。でも終身雇用で転職経験なしで生きた人を1人も知らないから、その利は全く理解できずにただ制限されている印象しかない。

極端なこという人は、今の大企業も定年のころには潰れていると言うかもしれない。ただ大企業には大企業になれただけの理由がやっぱりあるので、どんな大企業もつぶれているとはちょっと思えない。少なくともベンチャーのほうが頻繁に潰れている。だから終身雇用を当てにする就活もそこまで的外れではないんじゃないかなって思っている。だけど終身雇用で働きたいという意欲がまず無いから、メンバーシップ型雇用も受け入れがたい。

不平等であること

とにかく求職者側に不利な雇用方法だと思う。業務内容はわからない、働く場所さえもわからない、なんなら会社の都合で容赦なく変わるかもしれない。そんな状況でその組織に働くことだけが決まっている。

本来、労働契約とは対等なもののはずだ。むしろ資本主義黎明期の反省から、使用者は労働者と契約をする上で強い制限が課せられている。何もルールがなければ、使用者が圧倒的に有利なのが労働契約の場だ。最初から労働者は不利なのだから、労働者は労働契約の場の不平等さ、使用者の態度や振る舞いに敏感であるべきだ。

これは個人の感覚だけれども、僕はメンバーシップ雇用は求職者に対してとても不利であると感じる。会社が「今」確実に保証することはせいぜい賃金とか社会保険程度だ。なのに内定者には様々な制限が課されるし、職場や住居などの条件が確定する前に内定を受諾するかどうかを迫られる。

僕が受けているようなベンチャー企業の中途採用ではそこまで不公平さは感じない。提示された条件を受け入れるか受け入れないかだけだが、少なくともソフトウェアエンジニアとして採用されたがソフトウェアエンジニア以外の仕事をやる、ということは考えづらいし、住居などの調整は内定受諾前にできる。そこに不公平さは感じない。

組織の窮屈さ

自分の人生は自分のものであって、会社のものではない。

僕は大学生になったときに、自分が自分でいられるということに感動した。それまでの僕はたとえば「〇〇中学校のひかるくん」であったし、「〇〇高校のひかるくん」であったわけだ。それが証拠にいつも制服を着させられていた。常に「なにかに帰属している」自分でなければならず、その集団が是とする規範に従わなければならなかったのだ。大学生になったときにその不自由から解放された。さすがに法律に従う必要はあるが、髪が耳にかかって怒られるみたいな理不尽からは解放されたわけだ。

一方で、企業は自分たちの文化を新卒に押し付けてくる、まるで中学校や高校のように。メンバーシップ型雇用は自分を労働力としてみるのでなく組織の一員として見てくる。こう振る舞うのが善であると他所では通用しない規範を押し付けてくる。アホくさ。大学生になりやっとその窮屈さから解放されたのに、なぜもう一度あの窮屈な暮らしに戻らなければならないのか。

個人の自由が侵害されること

仕事を選ぶことは会社を選ぶことでは決して無い、というのが僕の考えだ。どんな会社で働いていたとしても、業務内容が違えばそれは違う職業だ。経理と総務が同じ職業なわけないだろう。

仕事を選ぶ権利は労働力市場において重要だと思う。にもかかわらず、メンバーシップ型雇用はその権利を個人から剥奪する。合法ではあるのかもしれないが、会社に自分の求める自由を侵害させるような生き方を、僕は選ばない。

まとまらないまとめ

いつも思っていることを書いた。いくつかは大学時代から思っていたことで、いくつかは会社員になってから思うようになったことだ。書いているうちにメンバーシップ型雇用に文句言っているのか終身雇用に文句言っているのかわからなくなったけど、表裏一体だから仕方ないねということでお茶を濁しておく。

僕は新卒一括採用の場に居たことがない。ただ観測範囲内では”どの会社に入れたか”でマウントとっている人が居た。あまりにも価値観が違いすぎて話にならなかった。例えトヨタ自動車に入れたとしても、経理とか人事担当なら僕はやりたくないぞ。

ちなみに大学の事務員とかも定期的に配属が変わる。どうやら癒着とかが起きないよう定期的に異動させられるらしいのだが、異動はプロパーだけなので10年同じ現場にいる派遣の人のほうがそこにいるどのプロパーよりも詳しいみたいなわけわからん自体が起きていた。大学時代は意味がわからなかったけど、会社にもそういう場所があるようなので、そういうもんらしい。

だらだらと書いたけど、本当に言いたいことはひとつだけ。「気持ち悪い」。

僕は自分の権利とか自分が自由であり続けられるかについてすごく重視していて、もっと敏感でありたいと思っている。その原則は僕の人生は僕のものだからだ。親のものでも会社のものでもない。だから、自分の人生を(僕が思う)必要以上に売り渡すような行為がとても気持ち悪いと感じる。

もっと自分の人生を大切にしたいよな。

Originally published at https://blog.515hikaru.net on February 23, 2020.

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